漢方薬によるアトピー性皮膚炎治療薬研究変遷史



アトピー性皮膚炎と漢方薬「補中益気湯」

    
1994年新年号:『和漢薬』誌 巻頭随筆「新春漫談 中医漢方薬学」の一部

 

 近年、爆発的に大流行しているこの疾患は、難治性なるがゆえにマスコミに大きく取り上げられ、日本の漢方界でも多様な治療方法が研究発表され続けていますが、漢方や中医学にとっても、決して容易な疾患ではないようです。

 筆者自身も本誌四六一号に『アトピー性皮膚炎の中医漢方薬学療法』と題して、黄連解毒湯と滑石茯苓湯(猪苓湯)や六味丸・三物黄芩湯などの合方に、食餌療法の一環としてウチダのイオン化カルシウム併用による方法を発表させて頂いたところ、各地の先生方から好評を得ることができました。

 ところが、最近は拙論で発表した方剤の組み合わせの範囲内では、十分に解決できないケースが出現しており、新たに補中益気湯や五苓散・辛夷清肺湯などが、配合方剤の一環として重要な位置を占めるようになっています。

 

 とりわけ、脾や肺の気虚を無視できない病態が増えており、数年前までの「黄連解毒湯+滑石茯苓湯や六味丸」が主体であったのに加えて、「黄連解毒湯+補中益気湯+滑石茯苓湯」のパターンが増加しています。

 前記拙論の発表当時は、補中益気湯類などの脾虚に対する方剤に関心をよせつつも、アトピー性皮膚炎に使用する必然性を認めることができなかったのですが、ここ二年間に爆発的に使用機会が増え続け、これによって当時と同レベルの有効率を、何とか維持しているのが現状です。

 したがって、前記の拙論は一部修正・補足する必要が生じているものの、補中益気湯類がアトピーに応用され得る理論的根拠は、すでに同拙論中に「脾虚について」と題した項目を設けて、ある程度のヒントを述べています。

 補注:

もしも子供さんのアトピーが多いようでしたら、食物アレルギーが顕著な例では補中益気湯が適応する場合が意外に多く、過去にも重症のアトピーの幼児で淡白舌で胖大、舌先は紅に「黄連解毒湯+補中益気湯」で速効を得て効果が途絶えることなく治癒しています。この場合、補中益気湯中の当帰などで氷伏を避けることが出来ます。

2006年12月10日:アトピー性皮膚炎の冬季悪化についての御質問より)

とあるように、食物アレルギーが顕著な小児に補中益気湯証が主体になっていることが多いことも、現代社会におけるアトピー性皮膚炎の特徴でもある。